事例

ソニー・フィルハーモニック・オーケストラ 創立30周年記念熊本公演にて、インクルーシブアートを活用したネックストラップとポストカードを制作

2025.03.15

感謝をどう伝えるか? その問いに、インクルーシブデザインで応えた共創のかたち

水色のペイントが施されたクリアファイル、ポストカード、ストラップが規則正しく配置された画像

講演会のために制作されたデザイン

「感謝の気持ち」を、かたちにしたい

2025年3月15日、熊本県立劇場コンサートホールにて開催された「ソニー・フィルハーモニック・オーケストラ 創立30周年記念熊本公演」。

熊本にある半導体製造拠点は、地元の皆さまの深い理解と協力に支えられています。 そんな地域の方々へ、「感謝の気持ちを伝える」という思いから、この演奏会は企画されたとのことでした。

そしてその思いを、インクルーシブデザイン・ワークショップを通じてかたちにしてほしい——それが、株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ(SMS)に寄せられたリクエストでした。

単なる贈り物や販促物ではなく、想いのこもった表現をかたちにしたい。その願いを受け、SMSは、Creative Vision Projectの一環として、制作を始めました。

インクルーシブデザインで想いを届ける

今回の制作にあたっては、スケジュールの都合上、新たにワークショップを実施することは叶いませんでした。 そこでSMSは、過去一年にわたりCreative Vision Projectの取り組みの中で行ってきたワークショップ作品の中から選定する方法を採用しました。

これらのワークショップは、一般社団法人konstの監修のもと、軽井沢町地域活動支援センターを利用する約20名の障がいのあるクリエイターと、SMS所属のアートディレクターおよびグラフィックデザイナーが共創したものです。

数ある作品の中から今回選ばれたのは、いずれも液体が流れるような様子を思わせる、神秘的な印象を持つアート作品群でした。 これらの作品には、マーブリングという水を使った技法が用いられており、その技法が選定の決め手となりました。

水の流れや偶発的な模様に、参加者それぞれの創造性が溶け込み、ひとつとして同じもののないアートが数多く生まれていました。 その表現が、半導体製造に欠かせない“水”というテーマの象徴として、今回の演奏会に最もふさわしいと判断されたのです。

音楽と宇宙が交差するデザインへ

選ばれたアートは、SMS所属のデザイナーが再構成。 演奏会プログラムの「E.T.」「スター・ウォーズ」「新世界より」といった楽曲群から着想を得て、「宇宙」を感じさせるデザインとして、ネックストラップ、クリアファイル、3枚組のポストカードに展開されました。

これらのグッズは、演奏会当日のスタッフが着用・配布しただけでなく、前日の公開リハーサルに参加した地元の小中学生たちにも記念として贈られました。 楽器に触れ、プロの演奏を間近に体験した子どもたちの心に、強く残るものになったはずです。

女性がマスクを着けた女子生徒に首からネームストラップをかけている様子。女子生徒はクラリネットを持ち、バスの前で準備をしている。

ストラップを受け取る地元の中学生

セーラー服姿の女子生徒たちがクラリネットを手に、合奏リハーサルの準備をしている。前方では男子指導者が座って生徒と話しており、周囲には楽器や譜面台が並んでいる。

公開リハーサルでは楽団に交ざり演奏に参加

共創がもたらす、未来へのつながり

障がいのあるクリエイターの表現と、プロのデザイン、そして地域への感謝の気持ち。 それらが一つに重なり、ただのツールではなく、「伝わる」プロダクトが生まれました。 アートとデザインが、想いを社会に届ける——そんな可能性を感じさせる取り組みになったのではないかと思います。

地域と企業のあいだに芽吹く新たな共創のかたちを目の当たりにし、 Creative Vision Projectが掲げる「多様な創造性を社会価値に変えていく」という理念の実現に、確かな手応えを感じました。

ブルーの柄が入ったネックストラップの写真

ネックストラップ

ブルーの柄が入ったクリアファイルの写真

ポストカード

3枚のポストカードの写真

クリアファイル

水色のペイントが施されたクリアファイル、ポストカード、ストラップが規則正しく配置された画像

クリアファイルとポストカードには水の透明感も表現