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音を起点にひらく、表現のかたち——インクルーシブデザインワークショップ 実施

2025.10.29

2025年10月29日、長野県・軽井沢町保健福祉複合施設「木もれ陽の里」内、軽井沢町地域活動支援センターにて、インクルーシブデザインをテーマとしたワークショップを実施しました。本ワークショップは、軽井沢町の委託で軽井沢町社会福祉協議会が推進する「障がい者の社会参加・就労の機会確保事業(通称:アート・あぷりえ)」の一環として、一般社団法人konstの協力のもと、株式会社ソニー・ミュージックソリューションズのクリエイティブチームが企画・運営したものです。
本取り組みは、「音」をテーマに年間を通して実施しているワークショップシリーズの第2回にあたり、障がいのある方をはじめとする多様な参加者が、表現を通して関わり合うことを目的としています。

テーブルを囲んで、参加者が絵の具や道具を使いながら音をテーマにしたアート制作に取り組んでいる様子。色や素材を使って、それぞれの表現を形にしている。

音をテーマに、自由に表現を楽しむワークショップとなった。

音からはじまる、表現の時間

今回のワークショップでは、完成した作品そのものよりも、「どのように音を感じ、どのように表現へつなげていくか」というプロセスに重点を置いて企画しました。音を単に聴く対象として捉えるのではなく、身体感覚や視覚と結びつけながら表現へとつなげることで、自然に創作へ向かう体験を目指しています。

また、参加したクリエイティブスタッフ自身がインクルーシブな視点を体感し、今後の表現や企画に生かしていくことも大きな目的のひとつです。ワークショップに企画段階から関わることで、多様な感じ方や関わり方を実感し、それを今後の創作やプロジェクトにどうつなげていくかを考える機会としています。

音からかたちへ ― 表現をひらくアート制作

ワークショップの前半では、音をさまざまな方法で視覚的に表現するアート制作を行いました。楽曲をリズムやメロディーといったパートごとに分けた音源を聞きながら、それぞれの感じ方に応じて色や形で表現していきます。

会場には四つの制作スペースが設けられ、それぞれ異なる手法で制作ができるように準備しました。ひとつは、木箱に張ったゴムバンドに絵の具を含ませ、音楽に合わせて弾くことで色を飛ばす「輪ゴム楽器」。 もうひとつは、ビー玉やゴムボール、鈴などに絵の具をつけ、音に合わせて転がしながら描く「コロコロドローイング」。 さらに、竹串や棒状の道具を使い、リズムに合わせて紙に穴をあけていく「“ホール”ニューワールド」と呼ばれる手法です。 加えて、スプレーボトルを使い、音楽のリズムに合わせてインクを吹きつける「スプレーアート」も取り入れました。 色を重ねたり、あえて一色に絞ったりと、参加者それぞれが自由に表現できる方法として取り入れられました。

テーブルを囲み、木箱に張ったゴムに絵の具を塗って音をテーマにしたアート制作に取り組む参加者の様子。

輪ゴム楽器

音に合わせてゴムを弾いて、色を重ねて表現する参加者の手元。

音に合わせてゴムを弾く

木枠の中で球をころがし、音をイメージした模様を描く参加者の作品。

コロコロドローイング

机に向かい、色や形を選びながら制作に集中する参加者。

さまざまな物を転がして制作

竹ひごで、穴を開けて紙に文字のような図形を描いているようす

“ホール”ニューワールド

真剣な表情で、竹ひごを使って紙に穴を開けていく参加者の横顔

集中して穴を開ける様子

スプレーでカラフルな絵を描いているようす。

スプレーアート

オレンジと黄色のカラフルな色がスプレーされた、作品を見ている参加者

思い思いの色でスプレー

参加者はこれらの手法の中から自由に選び、ひとつの方法にじっくり取り組んだり、複数を行き来しながら制作しました。音に耳を傾けながら手を動かすことで、線の動きや色の重なりに自然と個性が表れ、同じ音源を用いていても、バラエティ豊かな作品が生まれました。

制作は、楽曲をいくつかのパートに分けて進められ、音の変化に合わせて表現を重ねていきます。完成した作品はその場で乾かされ、後半のプログラムで鑑賞するために準備されました。

音を重ねて生まれる、ひとつの流れ

続いて行われたのは、音を「演奏する」ことを体験するプログラムです。色分けされたカードを五線譜に見立て、参加者一人ひとりが担当する音を鳴らしながら、全体で一つのフレーズをつくっていきます。

音を出すタイミングや強さはそれぞれ異なり、互いの音に耳を傾けながら自然とリズムが生まれていきました。演奏を通して、参加者は自分の音が全体の中でどのように作用するのかを体感していきます。

SMSスタッフが色分けされたカードを指して、演奏を指揮している様子。

スタッフの指揮でハンドベルを演奏

参加者がカラフルなハンドベルを手に持ち、笑顔で演奏している様子。

ハンドベルを演奏する様子

作品を通してひらく、気づきの時間

ワークショップの後半には、前半で制作した作品をあらためて並べ、全体で鑑賞する時間を設けました。音をもとに生まれた作品を見比べながら、「どんな音を想像していたのか」「どのように感じたか」など、さまざまな感想を共有しました。

作品を通して互いの感じ方を知ることで、それぞれの表現がどのようにつながっているのかを再認識する機会となりました。制作と鑑賞を行き来することで、より立体的な体験となりました。

次につながる視点として

本ワークショップは、単発の体験にとどまらず、インクルーシブな視点を制作チームの現場に根づかせていくための取り組みの一環です。音や身体感覚を起点にした表現を通じて、誰もが関われる創作のあり方を探り、今後の活動へとつなげていきます。

あわせて、障がいのあるクリエイターが制作に関わり、その表現が社会とつながっていくことも本プロジェクトの重要な目的のひとつです。創作を通じた関係性の中から、新たな表現や仕事の可能性が生まれていくことを目指しています。

今後も、こうした取り組みを継続しながら、創作を通じた対話と学びの場を広げていきます。