音で生まれるモンスターたち──軽井沢ワークショップ第3回レポート
2026.02.13
2025年1月28日、長野県軽井沢町の保健福祉複合施設「木もれ陽の里」内、軽井沢町地域活動支援センターにて、今年度3回目となるワークショップが開催されました。天候にも恵まれ、暖かい日差しが会場に差し込む中、「音からキャラクターを生み出す」という新たな試みが展開されました。
たくさんの個性的なキャラクターが誕生した
キャラクターデザインの新しいアプローチ
本ワークショップは、軽井沢町の委託により軽井沢町社会福祉協議会が推進する「障がい者の社会参加・就労の機会確保事業(通称:アート・あぷりえ)」の一環として、一般社団法人konstの協力のもと、株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ(SMS)のクリエイティブチームが企画・運営する年4回シリーズの第3回目にあたります。
2025年度のテーマである「音と絵を結びつける」探求を重ねてきた本プロジェクトは、今回「キャラクター創作」という新たな領域に踏み出しました。
SMSのクリエイティブチームは、制作業務の中で企業やアーティストのキャラクターを数多く手がけてきました。一方で、その多くは設定やストーリーから組み立てられる、論理的なプロセスを経て生まれています。
だからこそ今回は、そこに別の起点を持ち込めないかと考えました。音や感覚を出発点に、即興的にキャラクターを立ち上げていく──。そのプロセスであれば、言語化や論理構築が得意な人だけでなく、感覚や反応、身体性に強みを持つ人の「得意」も自然に活きてきます。
一般的なアートを創作するワークショップは、アート制作そのものの支援を軸に展開されています。音楽を起点にキャラクターを創り、それをさらに音楽へと循環させていく本プロジェクトの試みは、デザイン業務とインクルーシブな創作プロセスを掛け合わせる、新しい実験でもあります。
27名の障がいのあるクリエイターが集まった
偶然性が生む個性──泡モンスター
ワークショップは午後1時からスタート。最初のプログラムは「泡モンスター」と名付けられた、ユニークな創作体験でした。
クリエイティブスタッフが手作りした泡装置を使い、会場に流れる音楽からイメージを膨らませながら、モンスターの体を泡で形づくっていきます。できあがった泡の塊に目のシールを貼り付けると、それぞれのモンスターが誕生します。
泡という素材は、不安定で予測できない動きをします。思い通りにならないからこそ、偶然性が生まれる。その偶然性が、一つとして同じものがない個性的な造形を生み出していきました。
さらに、スタッフがその場で撮影してデータ化し、AIで動きを付けた映像をワークショップの最後に鑑賞するという仕掛けも用意されていました。アナログで生まれたキャラクターに、デジタル技術で命が吹き込まれる。エンタテインメント企業ならではの技術を福祉の現場に応用する、SMSらしいアプローチといえます。
参加者は楽しみながら制作に取り組み、個性豊かなモンスターが次々と誕生していきました。
泡を発生する装置を自作
泡で描いたモンスター
音が形を生む──モールモンスター
続いて行われたのは「モールモンスター」の制作です。モール、スポンジ、さまざまなパーツが用意され、参加者は自由にモンスターを組み立てていきます。
ここで重要な役割を果たしたのが、音を出す道具たちでした。「ぱふぱふ」と鳴るホーン、「シャララン」と音がする楽器、木の棒で擦ると音が出る楽器──これらを「モンスターの鳴き声」に見立てることで、参加者の発想が広がっていきました。
音から始まり、それぞれが自由に想像を膨らませて制作していく。このプロセスは、従来の「設定ありき」のキャラクターデザインとは対照的なアプローチです。想像以上に個性的で楽しいモンスターたちの出現に、参加者はもちろん、スタッフも驚きと笑顔を見せていました。
さまざまな素材を選んで制作スタート
個性的なモンスターが次々と出現
モンスターが楽譜になる──ミュージックモンスター
最後のプログラム「ミュージックモンスター」は、第2回で実施したハンドベルワークショップの発展形として設計されました。
前回は、音が割り当てられた丸いシートを楽譜に見立てて演奏しましたが、今回はその中に、先ほど作ったモールモンスターを楽譜の一部として組み込みました。モンスターたちが並ぶ「モンスターシティ」に見立てた大きな楽譜を使い、みんなでハンドベルを演奏します。
泡モンスター→モールモンスター→ミュージックモンスター(楽譜の一部)という3段階の展開により、キャラクターが「造形物」から「音楽の要素」へと変容していく──音楽から生まれたキャラクターが、再び音楽へと還っていく。この循環する体験設計が、今回のワークショップの核心でした。
予想外のメロディーが次々と生まれていく様子に、会場全体が笑顔と熱気に包まれました。キャラクターが単なる造形物ではなく、音楽という時間芸術の一部として機能する。この新しい統合のあり方は、キャラクター創作とインクルーシブデザインの交差点に、確かな可能性を示すものでした。
みんなでモンスターシティ(楽譜)をレイアウト
モンスターの楽譜にあわせてさまざまな楽器を演奏
創作が動き出す
3つのワークショップ終了後、今日のまとめとして、泡モンスターをAIで動かした映像を全員で鑑賞しました。先ほど自分が作ったモンスターが画面の中で動き出す瞬間、会場全体が予想外の動きや展開を食い入るように見つめていました。
静止した造形が動き、命を持ち始める。この体験は、創作のサイクルが一つ完結すると同時に、新たな物語への期待を生み出すものでした。
泡モンスター→モールモンスター→ミュージックモンスター(楽譜の一部)という3段階の展開により、キャラクターが「造形物」から「音楽の要素」へと変容していく──音楽から生まれたキャラクターが、再び音楽へと還っていく。この循環する体験設計が、今回のワークショップの核心でした。
ワークショップの終わりには、参加者から「次回を楽しみにしています」という声が聞かれました。次回のワークショップは3月に実施される予定です。
音とキャラクターが交わる場所で、また新しい表現が生まれることでしょう。